ELCAS・最先端科学の体験型学習講座(京都大学理学部)未来の科学者養成講座

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体験学習コースについて、もっと知りたい方へのQ&A

    
数 学

 

Q 実験のない数学は、体験コースでは何をするのですか?

A 洋書をみんなで読んでいきます

洋書というとびっくりされるかもしれませんが、数学の洋書というのは英語のレベルとしてそんなに難しいものではありません。高校2年生の英語力があれば十分に読むことができます。使用するのは「Proofs from THE BOOK」という本で、「THE BOOK」というのは「聖書」のことですから、この本のタイトルの解釈としては「神からの証明」ということになるでしょうか。タイトルどおり、数論、幾何学、解析学など、大学で深めていく数学の基礎的な部分について丁寧に書かれた好著です。

Q どんなやり方をするのですか?

A 「大学のゼミ」さながらです。

毎回発表者を決めて、訳しながら解釈していきます。もちろん、単に日本語に訳すだけではなく、発表者が内容を理解して、メンバーに説明していくのです。そこでの疑問などを、チューターの大学院生、担当の先生などのサポートを得てみんなで解決していきます。

Q どんなことが身に付きますか?

A 夢やロマンを追いかける数学を実感できます。

すでにご紹介したように、大学の数学というのは、「未知なるもの」を解明していく学問です。大学の数学を何も知らずに入学すると、高校との違いに面食らう学生が現れますが、経験しておくことによってそのギャップに苦しまずにすみますし、現在学んでいる高校数学に対するとらえ方や価値観がおそらく変わると思います。「答えを導くツール」ではなく、夢やロマンを追いかける数学、というものを実感していただけるでしょう。

物理学 
Q 体験コースではどのようなことをするのですか?

A 物質の普遍と創発現象を解明する実験を行います。

原子や素粒子などの物質の最小単位に着目した実験や原子・分子単体への考察だけでは想像ができない原子・分子集団や組織の振る舞いの実験を行います。また、実験の基礎知識や、物理現象を表すのに必要となる微分・積分などの数学についても、気軽に聞くことができる環境を用意します。

Q 実験の内容を具体的に教えてください。

A 「放射線を目で見る」実験はおもしろいですよ。

放射線が通ったあとに霧の線が見える「霧箱」という装置やガイガーカウンターという放射線の検知器を自作してもらい、目に見えない放射線を観測します。また、宇宙線からミューオンという素粒子をつかまえ観測し、運動しているものは時間の進み方がゆっくりになるという「特殊相対論」を実感してもらったりします。

Q 京都大学理学部ならではの特徴的な装置などを使えるのですか?

A 「ダークマター実験棟」へようこそ!

宇宙の全質量のうち、実は目に見える物質は10%程度しかないと信じられています。見えない残りの物質を「ダークマター」というのですが、このダークマターを探索するための施設がこれです。ほかにも、ノーベル賞を受賞したようなすぐれた先生たちが考案したり使用した装置や危機がいっぱいですし、もちろん、ELCASの体験講座でも使っていただきます。

Q ダークマターの研究はどんなふうに進んでいるのですか? 

A 軽い「アクシオン」を探しています。

アクシオンという素粒子がみつかればダークマターが説明できるのですが、電子の質量より重いアクシオンは存在しないことがわかってしまいましたので、いまは電子の重さの10の10乗分の1ぐらいの、ものすごく軽いアクシオンを探しています。みなさんもぜひごいっしょに!

生物学
Q “生物=観察”のイメージ。体験学習コースでは何を観察できますか?

A さまざまな生物を対象に、肉眼からミクロの世界まで観察します。

観察の対象は多岐に亘ります。たとえば、、チンパンジーの脳やカエルの精子、タマネギの表皮細胞など、全部で15種類くらいの生物を電子顕微鏡も活用しながら詳しく観察します。もちろん、観察して終わりではなく、いろいろな方法で測定したり、構造を調べたりして特徴を明らかにするのが目標。達成の喜びは格別です。

Q 遺伝子学に興味があるのですが、関連した授業はありますか?

A 実際に植物のDNAを抽出してもらいます。

学校で塩基配列のことは勉強しましたよね?でも、それを実際に取り出すなどという経験はしていないでしょう。体験学習コースでは大学の研究室で行っているのと同じ方法で、DNAを抽出し、塩基配列を決定し、さらにデータベースと照合して同定を行う。つまり、遺伝子研究の基本的な作法を習得できるわけです。このほか、最新のゲノムプロジェクトの成果に沿ったコンピューター実習などもあります。

Q 教科書の知識だけでついていけるでしょうか?

A 基礎知識があれば大丈夫。あとは実践あるのみです。

専門用語も出てくるのでまるごと理解するのは難しいかもしれませんが、実体験を重ねればおのずと理屈もわかってきます。大学では知識と経験を生かし、自分で課題を見つけ、それを解決していく力が求められるのです。パワーポイントや画像ソフトの使い方など、発表やレポート作成に必要なスキルも一通り学べるので、のちに高校との授業スタイルの違いに戸惑うこともないでしょう。

化 学
Q 大学の化学のイメージを教えてください。

A 物質のメカニズムの基本を知るところから始まります。

高校生としては、ビーカーに液体を入れたり試験管を振ったりして物質を合成する、というようなイメージを抱く人が多いでしょう。もちろんそういうこともするわけですが、物質の基本をしらないと、作りたい物質を合成することはできません。たとえば、なぜ電導性があるのか、電導性の物質とはどういう状態にあるのかなどを知ってはじめて、その次の段階に進むことができるのです。

Q 物質の基本を知るには何が必要ですか?

A 数学、物理学などの知識が不可欠です。

元素記号を覚えたり、化学反応のパターンを「暗記する」といったことを高校ではやっているかもしれませんが、大学の化学は、反応の基礎となる電子状態や分子の統計的性質を解析するというのも重要です。

Q どんな分野がありますか?

A 物理化学、無機化学、有機化学、生化学です。

有機化学は高校生にもイメージしやすいですね。物理化学は化学物質や化学現象について、物理学的視点からその性質を調べます。無機化学は物理と同じようなもので、超電導物質を合成したり、物質の「表面」だけの化学的な性質を研究したり…。生化学は生体物質の構造を探ります。薬学に近い感じですね。

Q どんな実験をさせてもらえるのですか?

A ふだん見ることのできない物質にも触れていただけます。

たとえば、シリコンの単結晶などはふだん見ることはないと思うのですが、これをダイヤモンドカッターで切ってみます。そうすると、原子の密度の高い面は割れやすかったりすることから、原子の構造を実感してもらえます。あるいは、三次元の結晶構造から面を取り出すとどういう原子配置になっているのか、物質の表面で共有結合が切れた状態はどうなのか、などを実像として見ていただきます。

宇 宙

地 球

Q 具体的にどんなものを観測し、どう展開させていくのですか?

A たとえば、太陽を観測してスペクトルデータをもとに太陽の自転速度を求めます。

太陽の自転速度を求める場合は、まず太陽専用のシーロスタット望遠鏡で分光観測を行い、次にパソコンでスペクトル画像を処理、ドップラー効果による波長のズレの修正などを行い測定します。「約1.5km/sです」と結論だけ聞いたら「ふーん」という程度でしょうが、これを自分の力で導き出すのは楽しいものですよ。

Q 屈折望遠鏡を実際に操作できるって本当ですか?

A もちろん本当です。大学生と同じように体験してもらいます。

観測会場の京都大学附属の花山天文台は、国立天文台に次ぐ日本で2番目に古い天文台で、100年前の屈折望遠鏡(現役)や国内最大級の規模を誇る屈折望遠鏡を有する大変恵まれた環境です。それらの観測機材の操作技術を学ぶと同時に、宇宙への関心をさらに高めてほしいですね。また、データ解析やシミュレーション化を行う際はパソコン操作が必須です。最初はだれもが四苦八苦しますが、マスターすれば鬼に金棒です。

Q 地球温暖化について学べますか?

A まずは、気象学の基礎的な内容からはじめます。

気象学の基礎的な内容を学んだあと、現代社会的な関心の高い地球温暖化問題の理学的側面について一緒に考えていきましょう。たとえば、気象観測手法や、 地球の熱収支、カオスについて学びます。また、地球からの熱放出の一部の赤外線について、実習をして学びます。カオスについても、身近にある電卓をつかって計算し、50回程度の計算を繰り返すと電卓によって完全に異なる計算結果になるということを体験します。

Q あらかじめ勉強しておくべきことはありますか?

A 体験学習コース序盤に講義を行うのでご安心を。

宇宙のカラクリを解き明かす道具の一つが物理学や数学です。高校で与えられた道具だけではどうしても足りないので、宇宙物理学に通じる講義を設けています。たとえば、「富士山の頂上から初速何km/sでボールを投げると地球を一周して戻ってくるか」という問題について、ボールの運動方程式を立て、オイラー法による微分方程式を数値積分し、ボールの軌跡を求めるプロセスを学びます。あえて先取りをするよりも、普段の数学や物理学の勉強をしっかりやっておいてください。