ELCAS・最先端科学の体験型学習講座(京都大学理学部)未来の科学者養成講座

ELCAS・最先端科学の体験型学習講座(京都大学理学部)未来の科学者養成講座

体験アーカイブ・2010年10月16日

体験学習コースの受講模様を分野別に掲載しております。

数学

チューター:広瀬稔(修士課程2回生)、佐藤信夫(修士課程 2回生)、竹内 光(修士課程 2回生)

実施場所:理学部3号館 109講義室

第7章『some irrational numbers』の続きをやった。証明したことはπ^2が無理数であること、そしてn≧3が奇数であるとき1/π×arccos(1/√n)が無理数となることだ。π^2の方の証明では微積分を使う。まだ学校で微積分をやっていなかった生徒たちには、公式を形式的なものだと思ってもらって先に進んだ。生徒によって高校で勉強している範囲が異なるので、不慣れな生徒や分かっていなそうな生徒にはその都度補足説明をしながら進んだ。

   

受講したELCASメンバーの感想文

  • 充実した時間だった。
  • 今回は遅れてきたのでほとんどできませんでしたが、また考えてみます。
  • 前回休んだのでひさしぶりのELCASでしたが楽しかったです。内容はarccosに関する証明とπ^2が無理数であることの証明。π^2に関しては身近でとても楽しかった。
  • 学校でやっていない微積分の計算が出てきて難しかったので、π^2が無理数になる証明がわかりにくかった。でも何となくわかったのでとても面白かった。
  • 雰囲気にだんだん慣れてきた。証明は難しかったが、チューターの方に説明してもらったりして、流れをつかむことができた。もう少し家で考えたら理解できると思う。
  • 充実感はあったが疲労した。
  • π^2とか1/π×arccos(1/√n)とかが無理数なことの証明だったが、はっきり言ってムズカシイ!理解するので精一杯。でも、それはそれで中々に楽しい。面白い。

物理   

山本潤(ソフトマター研究室 教授)、高西陽一(同 准教授)、常見 俊直(研究員)

チューター:吉岡 潤(博士課程1回生)、渡邉 大樹(学部4回生)

実施場所:理学部5号館115号室、223号室

液晶分子に電場をかけた際の応答についての講義を聞いたあと、実際にどのように応答するか電場の強さを変えながら応答の度合を測定した。

 
山本教授の講義 測定
解析

 

受講したELCASメンバーの感想文

  • 液晶の実験はすごく楽しかったです。実験結果をグラフにプロットするのが大変でしたが、それっぽいグラフが見えた時は感動的でした。そろそろフェルミオンになりたいです
  • 液晶を作っている分子が、電圧をかけるとその向きを変えると云う事は聞いた事がありました。実際に観察すると、光を通したり通さなかったりするだけでなくて、かける電圧の強さによっては、出てくる光の色が赤くなったり、青くなったり変化する事が分かりました。固体(結晶)は向きによって屈折率が異なるので、複屈折という現象を起こすそうですが、その事が関係しているのでしょうか?
  • 前回の説明では分からなかった「複屈折」の原理が今回ちゃんと理解できて嬉しかった。行った実験の測定結果は、なぜか理論的に考えられる結果とは異なっていた。実験はやはり失敗がつきものなのだなぁと思った。
  • まず第一に楽しかったです。普通に生活していても見ること、触ることができない実験器具にも徐々に慣れてきました。物理って聞くと生活から程遠い気がしますが液晶なんかは本当に生活と関係していてますます共感がもてました。早いことにもう4回終了。一回一回を大切にし、どんどん吸収していきたいです。
  • 理論が全くあてはまらなくておもしろかった。もしかしたら新しい理論を切り開けるかも?
  • 今日は厚さの違う液晶に電圧をかけてどうやって相転移するのか調べたが、結果は予想とは大きく違ったのでとても興味深かった。何故そうなったのか考えてみたい。ガラスに初めて半田づけをした。ふつうに銅板にはんだづけは慣れているので、その感じでいけるだろうと思っていたのだが、なかなかガラスの半田はとけにくく、てこずってしまったが、なんとかつけることができてよかった。
  • 今日も液晶に関する実験で新しい見地が開かれた気がする。そもそも液晶に弾性エネルギー的なエネルギーが蓄えられることも知らなかったので液晶全体で最もエネルギーの低い状態で安定するという考えすら無く、今日の実験は本当に新しい発見でした。実験結果が予想と正反対でも気にしません。
  • 学校にない実験装置で実験できてよかったです。実際に実験をして目で感じる方が理解が深まるなと思いました。あの難しい式を理解したいです。
  • フレデリクス転移のグラフを書いたり測定するのがとても大変でした。でもけっこう楽しかったです。
  • オプションの時に波動方程式(でしたよね?)をスラスラ解いてしまう人がいて驚きの連続でした・・・。CDのしくみが少しわかってすっきりしました。実は前から気になっていたので。本編でのデータ解析はグラフが忠実にできたとき少し感動しました。少しのデータの間からさらにデータがとれて感心しました。

天文

平田 岳史 (相関地球化学 教授)

チューター:横山 隆臣(博士課程2回生)

実施場所:理学部1号館151号室

前回の実習に引き続き隕石中のニッケル分析を行った。前回のELCAS実習では、化学分解、元素分離、錯形成反応による元素検出を行い、化学反応の基礎と実際を体験してもらったが、今回は研究の最前線で用いられているレーザー質量分析装置を用いてニッケルの超高感度分析を行った。今回用いた分析装置では固体試料の局所分析が可能であるため、隕石の主要2成分である珪酸塩鉱物と金属鉄・ニッケル合金をそれぞれ別々に分析することができる。これを利用して、珪酸塩相と金属相でどちらにニッケルが濃集されやすいかを実験的に調べた。実験にさきがけ、隕石の分類や隕石と地球形成との関連、分析法の解説を行った。実験では、参加生徒各人が装置の操作を行い、珪酸塩相と金属相中のニッケルの定量分析を行った。最先端の分析機器であるため操作が非常に複雑であったにもかかわらず、参加生徒はとまどうことなくスムーズに分析作業を進めていた。生徒各人が得られた分析データから珪酸塩相・金属相中のニッケル濃度を計算した。得られたニッケル濃度データから、ニッケルは珪酸塩相に比べ金属相におよそ1300〜6000倍も濃集することがわかり、地球内部ではニッケルの大部分が金属中心核に濃縮していることが理解できた。

実験の前に隕石の説明と分析装置のしくみを勉強しました。 最先端の分析装置を使って隕石の化学分析を行いました
分析データの解析法と得られた結果が何を示すかを議論しました

 

 

生物

鹿内利治 (植物分子遺伝学 教授)、西村芳樹(同 准教授)

チューター:国吉哲紀(修士過程1回生) 、平純考(修士課程1回生)

実施場所:理学部2号館210号室

シロイヌナズナの重力屈性の出来ない変異株と野生株を用いて重力情報による植物体の運動をモニタリングした。実験では、一定時間ごとに写真を撮りその画像を連続再生することで運動を可視化した。

また、蛍光顕微鏡を用いてクラミドモナスのmatingにおける葉緑体の蛍光消失から、葉緑体の母性遺伝のしくみについて学んだ。

植物の重力屈性 教授による実験説明
蛍光顕微鏡によるmatingの観察

       

受講したELCASメンバーの感想文

  • 光屈性を観察し、仕組みの解説を受けた。
    実際にはさほど曲がらず残念だったが、曲がる仕組みの解説はとても分かりやすく、興味が持てた。植物が重力を感じるのは、本質的には人と同じだというのが、とても面白かった。
    また、研究室見学では様々な顕微鏡を見たが、どれも非常にハイスペックで、ぜひ自分で実験で使ってみたいと思った。特に、光ピンセットは1つだけが動くというのがとても面白かった。
    今日はとても面白い講座ありがとうございました。
  • 今日は、様々な顕微鏡や、設備などが見られて良かったです。色々な部屋や、冷蔵庫も良かったですが、特に、光ピンセットが面白かったです。あれはハマりました。
    植物が重力を感じる仕組みも面白かったです。
    アミロプラストなど、学校じゃまったく習わないような物質なども知れてよかったです。
    やはり、こういう機会でしか、先端科学に触れることがないので、毎回楽しみにしています。参加するたびに新しい知識が増えるし、色々なことも考えたり出来るので、とても有意義な時間だと思います。
    今から次回が楽しみです。
  • 今日の体験学習では、色々な研究室を視察することが出来ました。様々な印象的な器具を見ることが出来てかなり良い経験だったと思います。
    中でも一番印象的だったのが光ピンセットでした。ひとつのクラミドモナスの細胞をレーザー光線で固定して動かすことの出来る装置でした。一度操作をするともう離れることが出来なくなってしまい、結構長い時間触れていたと思います。かなり楽しかったです。今回の体験学習で良い体験を残すことが出来ました。
  • ・今日は途中参加だったので、あまり詳しく内容を探ることが出来なかったので少し残念でした。
    ・光ピンセットでクラミドモナスをトラップする実験は楽しかったです。光ピンセットは、これからの科学研究に大きく貢献するように思いました。
    ・屈折のオーキシンによる反応については、長谷先生のときに少し教えていただいていましたが、今回テーマとして学ぶことが出来てよかったです。
  • 重力屈性の研究で写真をとって後からパソコンで見てみると、写真の数は少なかったけど、屈性するところがはっきりと分かりました。
    2000万円する顕微鏡を使わせてもらって楽しかったです。
  • 重力屈性の実験は茎が短くてあまり上向きに曲がったのが分からなかったが、たった1、2時間でぱっと見て分かる程には曲がったことに驚きました。
    研究室でのぞかなくて良い顕微鏡には感動しました。パソコンで全部ピント合わせも出来るので、眼鏡の私でも見やすくて、欲しい!と思いました…が、高くて手が出ません(笑)
    光ピンセットは、光で動かせるという事実に驚きました。
    あと、大学の学部の話や就職の話も聞けて、いろいろと将来の事も考えられて良かったです。
  • オーキシンの話は、一番初めの体験学習で聞きました。今日は詳しく原理を説明してくださいました。オーキシンのたまり方や、作用の仕方がよく知れてよかったです。
      光ピンセットはマリオカートみたいでとても面白かったです。
      一個の細胞を中心に他の細胞を押しのけて観察できて、とても分かりやすく、お金がたくさんあったら一台欲しいなぁと思います。
      パソコンにつないで見ることが出来る顕微鏡はとても高性能で、マウスでピントをあわせてあり、場所を変えたり、ズームをしたり出来ます。
    囲まれた視野内で見るときよりも、開放的で観察しやすくて、変わっていてよかったです。普通のときと違った感じで新鮮でよかったです。

化学-1

前里光彦 (有機物性化学研究室 准教授)

チューター:川口玄太(学部4回生)

実施場所:理学部6号館559号室

 まず前回合成した数種類の有機伝導体を回収し、顕微鏡で結晶の大きさや形を観察した。

 次にTTF-TCNQ を合成し、ペレットを作り、抵抗を測ったのち、まとめとして、 有機伝導体に関するディスカッションを行った  
前回合成した結晶を吸引濾過している様子 TCNQの溶液をTTFの溶液に加えている様子
TTF-TCNQのペレットを作っている様子

       

受講したELCASメンバーの感想文

  • TTFとTCNQの反応がすぐに起きておもしろかった。ドナーとアクセプターの関係が、少し分かった。さまざまな組み合わせでもっとやってみたいと思った。また、(TTF)(TCNQ)の導電性の理由も分かって、とても興味深かった。前回作った結晶が、数種の形の結晶ができて、おもしろかった。
  • 今日は前回つくったものを顕微鏡で見たりして、つくれたのにあまり大きくなかったり、つくれなかったりしたので、驚きました。TTFとTCNQを使って、混ぜて、色が一瞬で変わったので、面白かったです。原理や説明などは大体分かったのでよかったです。有機で電気を流すというのは、一方向にしか流れないとかがあったけれど、興味深く思いました。

化学-2

武田和行 (分子構造化学 講師)

チューター:土井崇嗣(修士課程2回生)

実施場所:理学部6号館377号室

最初の1時間は、前回の復習として核磁気共鳴の基礎について、もう一度講義を行った。その後、各自でプローブ作りを体験した。具体的には、コイルを手巻きし、そのコイルとコンデンサを基板上にはんだ付けした。そして基盤をプローブに取り付け、測定試料をセットし、共鳴周波数のチューニングをとった後、磁場中心にセットして測定を行った。そこで得られたスペクトルを元に、今回の測定結果について考察を行った。

基板上にコイルをはんだ付けする様子。 プローブを磁場の中心にセットする。
各サンプルから得られたスペクトルの考察を行った。

       

受講したELCASメンバーの感想文

  • 今まで自分たちがやってきた実験とは異なり、一つ一つの作業過程に重要な意味があり、それを自分たちで行ったので、さまざまなことが体験できてとても面白かった。また他のいろいろな物質でも測定を行ってみたいと思った。
  • 自分たちが巻いたコイルを使って、こんなにきれいなスペクトルデータが得られて、とても驚いた。今回僕が測定した試料では、各ピークの化学シフトが非常に近かったため、重なって見えたのが興味深かった。このスペクトルを分離するためには、より精密に実験を行わなければいけないそうで、正確なデータを得るためには努力をしなければいけないのだと思った。
  • 今回は実験をただ行うだけでなく、実験装置を自分たちで作るところからできたため、いろいろな経験ができてよかったです。実験結果はデータベースのものにくらべて少し荒かったけれども、自分たちでスペクトルを得られてよかったです。
  • 今日は実験装置作りにガラス細工やはんだ付けを行ったのがとても面白かった。特にガラス細工では自分たちで試験管を作ったが、普段学校では用意された試験管を使うため、非常に新鮮だった。はんだ付けも難しかったが、次の機会にはうまくできるように練習しておきたい。